部屋データ＜R4年＞

　相撲部屋の勢力をよりシンプルにわかりやすく表にまとめました。一門ごとに各部屋のデータ表、近年の動き、勢力の変化を解説。

　部屋の系統を把握しやすくなるようにまとめた「相撲部屋興亡史」は別ページに独立しました。

過去の一覧は以下リストから

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　白鵬が引退した伊勢ヶ濱は、照ノ富士が大関復帰、瞬く間に横綱になり年４回も優勝。鶴竜が引退した時津風は、大関正代の調子が上がらないものの、大栄翔が優勝するなど伸びている力士が多い。二所も貴景勝の綱取り、高安の大関復帰が叶えば躍進と言えたが、あまり勢力に変化はない。出羽海は御嶽海が大関昇進を果たしたが、これに続く層が立浪勢くらいで、大きな勢力拡大とはいかない。大関朝乃山の出場停止で役力士不在となった高砂一門は、上位にいるのが八角の２人くらいで、劣勢は否めない。

　高砂と時津風では、運営が難しくなっていた部屋が閉鎖。二所ノ関では、師匠停年が３件あり、放駒部屋が二所を完全継承、押尾川部屋が尾車を一部引き継ぐ形で誕生。峰崎は系列の部屋に吸収された。そして満を辞して元稀勢の里が独立。さらに二所ノ関の名跡を譲られ、尾車からも一部の弟子を預かった。プラマイゼロで一門別最多の部屋数は変わらず。出羽海は、境川から元豪栄道の武隈が独立して１増、二所に迫る。

　2月理事選は、連続で無風。八角理事長の４選も確実。北の湖急死に伴う暫定政権から、すっかり安定政権になった。一門間の動きも急に沈静化した。

　一門ごとに、各部屋の現状を表でまとめていく。毎年2月ごろの状況。

　部屋のルーツなどは、下部の別表を参照。

・色付き文字は、直近１年の変更点。部屋の新設、改称、師匠の継承など。

・創設年は、改称の場合や再興であっても、その年を記載している。

・独立元欄、　*は実質継承の場合の継承元。（）は師匠の名跡変更前の部屋名

・代表力士は、部屋を代表するOB力士。(現師匠を除く)

・現役力士は、所属する主な現役関取。（）は関取経験者。

・積は実績、層は所属力士の層の厚さ、力は現状の勢力の強さ。A~Fで評価。

・矢印は、前年との比較

　明治期に権勢を誇った高砂の直系を中心とした一門。横綱、大関となった歴代朝潮太郎を中心に、男女ノ川、前田山、東富士、ハワイ勢にモンゴル出身朝青龍など超個性派を生み続けた。若松、振分、大山、中村、東関など度々分家独立はあるが、いずれも一、二代で終わって拡大せず、本家が柱となっている。

　昭和42年、出羽一門を破門されて独立した元横綱千代の山の九重を受け入れ。九重部屋からは3横綱1大関が育った。一時北の富士が井筒として分家したが、千代の山の急逝で統合して継承。千代の富士は一代年寄を辞退してこれを継ぎ、その死後は弟子の元大関千代大海が継承。北勝海は八角として独立した。

　土俵上での存在感、優勝回数では、出羽や二所を上回る時代が長かった一方、分家筋の活躍が乏しいこともあり、少数勢力のまま。北の富士、千代の富士ですら理事から漏れる屈辱を味わったが、平成28年には八角が、一門初の理事長となった。

　横綱朝青龍、大関千代大海が引退した平成22年以降は横綱大関、優勝力士が途絶えた。29年には高砂部屋に138年続いた関取が不在となったが、1場所で朝乃山が十両に昇進。さらに令和最初の優勝者、そして大関となった。九重も次々関取を生み、常に大所帯の八角も関取が絶えない。

　高砂部屋は朝赤龍が継承したが、直後に大関朝乃山のコロナ禍での外出制限違反が判明。虚偽申告により6場所もの出場停止処分となった。大関から三段目まで転落の見込み。

　令和優勝力士第一号となった朝乃山以来、一門に賜杯は戻ってこない。看板力士が離脱し、一門の命運が大きく揺らいだ。

　八角部屋の北勝富士、隠岐の海が幕内上位で奮闘中だが、九重勢は５人が幕内を維持したが、すでに30歳前後でピークを過ぎ、上位進出は厳しそう。千代鳳が引退したが、史上最長ブランクを大幅更新して千代嵐が再十両と、層の厚さはすごいが。

　次世代のホープといえば、十両昇進した二代目朝乃若、元高校横綱の北の若くらいか。

　錦戸部屋の水戸龍は十両優勝でようやく幕内かと期待されたが、部屋勢初の昇進はならず。

　高見盛が暫定的に継承した東関部屋だが、やはり運営困難として３年春限りで閉鎖。力士は八角部屋へ移籍した。元高見山が興した史上初の外国出身師匠の部屋は、三代三十余年で幕を閉じた。

　角界の保守本流と言われる出羽海一門。戦後の協会運営においても、元横綱常ノ花の出羽海から北の湖まで5人の理事長を出している最大勢力だ。長年分家独立を認めていなかったが、昭和の終わりから方針転換。例外的に古くから独立していた春日野、三保ヶ関からの分家も相次ぎ、部屋の数はついに二桁を超えた。

　戦前は幕内の片屋を独占するほどの大勢力を誇り、戦後も千代の山、佐田の山と横綱が出て、栃錦、栃ノ海らを出した春日野との両輪で角界一の大勢力を維持した。その後は大鵬や花籠勢を擁した二所一門に席巻され、三保ヶ関から出た北の湖を擁して巻き返したが、その後の九重勢、二子山勢が独占する時代には、長らく賜杯から遠ざかった。平成10年代に入り、武蔵川が同時に1横綱3大関を擁し、玉ノ井、尾上、境川と新興勢力から大関が輩出する一方、出羽海部屋は100年ぶりに幕内力士、関取までも途絶えるなど、本家筋は苦境を迎えた。

　平成も30年になってようやく春日野の栃ノ心が、出羽海の御嶽海が、それぞれ数十年ぶりの賜杯奪還。のちに大関にもなった。

　令和に入って大関不在になるなど、頼みの春日野勢、境川勢が衰えると全体的に凋落傾向だったが、4年初場所で３回目の優勝を果たした御嶽海が万年候補を返上、一門に大関が戻った。

　ホープが伸びてこないのが気になっていたが、前年十両で決勝巴戦を戦った立浪３人衆が幕内で躍動。明生は怪我から復活し新関脇、豊昇龍も上位で通用し、新三役へ。遅咲きの天空海も掛け投げで魅せている。

　層の厚い木瀬部屋は高齢化しつつも、宇良が序二段から復活し最高位更新、三役目前まで来た。30歳を過ぎた英乃海も十両暮らしを脱して幕内中位で健闘していたが、賭博問題で出場停止処分。一時は部屋の閉鎖も噂されるなど大騒動になったが、厳罰は免れた。

　4年2月1日付で元大関豪栄道の武隈が、境川部屋から独立。竜電に復帰後初黒星をつけて幕下優勝したホープの西川ら有望株を連れており、早速の関取誕生も十分ありうる。

　長年に渡り、出羽海に次ぐNO.2勢力を長年誇る一門。二子山理事長の時代を除いて万年最大野党の印象があるが、戦後の土俵の上では出羽一門を凌ぐ実績を残している。横綱玉錦が二枚鑑札で引っ張った二所ノ関は、玉ノ海が繋いだ後、大関佐賀の花が大鵬を擁して台頭。出羽海とは対照的に分家奨励の方針で、花籠から若乃花、輪島、片男波から玉の海、佐渡ヶ嶽から琴櫻と横綱が出て、一門として繁栄。花籠から独立した二子山からも続々と横綱・大関が育ち、平成に至るまで一定周期で土俵の中心を占めている。

　平成22年に貴乃花一派が離脱、本家・二所ノ関部屋の閉鎖など分裂危機もあったが、伝統の連合稽古など緩やかながら求心力を保っており、元若嶋津の松ケ根が名跡変更して二所ノ関部屋の看板が復活。30年には解散した旧貴乃花一門の殆どを受け入れ。その間に高田川の加入、鳴門、西岩の独立もあって、擁する部屋数では最多を誇る。

　貴乃花らが引退して二子山時代が終わった平成10年代後半以降、佐渡ヶ嶽から3大関が出た以外はやや下火だったが、29年に田子ノ浦部屋から横綱、大関が誕生した。さらに貴乃花部屋閉鎖で移籍したばかりの貴景勝が初優勝、若くして大関へと駆け上がった。

　この一年は、師匠が停年を迎える部屋が3つあり、部屋の継承に関する動きが相次いだ。

　8月、田子ノ浦が元横綱稀勢の里が荒磯部屋として独立したが、年末には停年となる元若嶋津から二所ノ関の名跡を譲られて、新生二所ノ関部屋となった。若嶋津は松ヶ根部屋から改称し、一時消滅した名門の看板を復活させていた。盟主たる名跡を敢えて譲ったのは、将来の一門のリーダーに箔をつけようという長老の配慮か。さらに初場所後には閉鎖した尾車から元幕内の友風らを受け入れ、所帯も大きくなった。

　松ヶ根から改称していた二所ノ関部屋は、引退後に片男波から移籍してきた元関脇玉乃島が、放駒部屋として継承。故・元魁傑の放駒部屋は弟子の芝田山に吸収されているので、再興するわけではなくあくまで松ヶ根の流れを汲む部屋。いっそ松ヶ根と交換して元に戻せば良いのに、ややこしいことになった。

　また、峰崎部屋は師匠（元三杉磯）の停年により閉鎖、独立元の放駒部屋を吸収した芝田山部屋へ合流した。

　元大関琴風の尾車部屋も停年を前にして、4年初場所後に閉鎖する。弟子の元豪風が押尾川部屋として独立を予定していたが、尾車の閉鎖が早まったため同じタイミングとなり、尾車と一部力士が移籍して設立することになった。したがって完全な継承ではなく独立扱い。二所ノ関部屋に移籍する力士の方が多く、同時に二所へ移籍した元嘉風の中村が近い将来独立予定というので、こちらは一時預かりなのだろう。コロナ禍で引退相撲も延びており、タイミングが合わなかったようだ。

　貴景勝の綱取り、髙安の大関復帰は怪我に阻まれたが、琴ノ若、王鵬の横綱三世が結果を出し始めたのは楽しみ。実力者の逸ノ城、阿炎も復活してきた。

　多様なルーツを持つ部屋が集合した一門。

　一つは、緑嶌が春日山部屋から独立し、双葉山、羽黒山らを擁して戦前戦後を席巻した立浪部屋を中心とした一門。そして、横綱照國らが活躍した伊勢ヶ濱の一門。さらに、大正期の強豪横綱太刀山が出た友綱部屋や、吉葉山などを擁した高島部屋の流れを組む部屋、大阪相撲の古豪・朝日山などが寄り合い、昭和中期から「立浪・伊勢ヶ濱連合」として定着していた。寄り合い所帯ながら緩やかに繋がっていたが、近年は足並みが揃わず混乱も目立った。

　平成18年に伊勢ヶ濱が閉鎖（19年に名跡変更で部屋名は復活）、さらに24年には盟主・立浪が他一門に流れてしまい、両軸が消滅。それに伴って「立浪一門」、「春日山・伊勢ヶ濱連合」、さらに「伊勢ヶ濱一門」と一門名の改称を繰り返した。部屋の閉鎖や流出が続き、現在は5部屋、年寄数も10名程度の勢力に縮小している。

　伝統ある立浪(現・出羽一門)や旧・伊勢ヶ濱、旧・朝日山の流れを汲む直系は一門から消滅し、伊勢ヶ濱一門と称しているが、友綱・高島の系統が主流。伊勢ヶ濱は安治川が名跡変更したもの。大島も師匠は立浪から独立した大島時代の弟子だが、友綱を継承した後の改称。朝日山は佐渡ケ嶽系統の新興部屋だが、特に揉めることなく一門を跨いで移籍したあたり、旧朝日山の再興と認められているのかもしれない。

　平成に入り、上位陣は初期は横綱旭富士、中期は大関魁皇しかいなかったが、後期は宮城野の白鵬、伊勢ヶ濱の日馬富士、さらに照ノ富士が横綱となり、伝統のい不知火型土俵入りを途絶えさせない。勢力の縮小ぶりとは裏腹に賜杯を独占し、平成トータルでもゴボウ抜きで最多の優勝回数となり、令和においても好スタートを切っている。

　名古屋場所、休場が続いていた白鵬が全勝優勝を置き土産に引退。全勝決戦に敗れて3連覇を逃した照ノ富士も、場所後に横綱に昇進。一人横綱として君臨し、連覇。一門としては5場所を制した。

　白鵬が去った宮城野部屋は、コロナ発生で初、秋と出場できず、期待の北青鵬のスピード出世も水を差され、挙句新十両初日に故障と随分道草を食っている。師匠は令和4年7月場所後に停年を迎えるが、すんなり元白鵬の間垣と名跡交換して継承するのだろうか。

　浅香山部屋の魁勝がついに十両に定着し、幕内を窺う勢い。

　朝日山は幕下もいないのは寂しい。今後に期待。

　友綱部屋は、魁聖が幕内を明け渡し、旭秀鵬が引退した4年1月場所後に看板を架け替え。前師匠と再び名跡変更して、大島部屋となる。元旭天鵬は、元旭國の大島部屋の後継者とされていたが、40歳で幕内を張る長寿ぶりで先に師匠が停年、友綱部屋に合流していた（その場所に37歳で優勝）。 大島は一時的に閉鎖し、引退後に再興かと思われたが、友綱も停年を迎えた際に、こちらの部屋ごと継ぐことになった。それがこのタイミングで大島に？元々そういう約束になっていたのかもしれないが、大島よりも歴史のある友綱部屋がなくなるのは寂しい。OBである魁皇の浅香山か現役の魁聖が、今後復活させてくれないものか。

　現役時代の角聖双葉山が、元大関鏡岩の粂川から部屋ごと譲り受け、立浪部屋から現役のまま独立した「道場」が起源。引退後は時津風部屋となり、巡業を共にした伊勢ノ海や井筒などの伝統ある部屋が合流し、古巣立浪とは別の一門を形成した。双葉山が率いた時代には屈指の大部屋で、粂川部屋時代に入門した横綱鏡里、大関大内山、北葉山、大学相撲出身力士の草分けである大関豊山、と強豪も育った。江戸期からの伝統ある伊勢ノ海部屋からは、横綱柏戸が出て長年綱を張るなど勢いがあったが、昭和40年代に鏡里の立田川、柏戸の鏡山、鶴ヶ嶺の君ヶ浜と出世頭が独立。分裂により小ぶりな部屋が増えた。長らく賜杯も横綱・大関の座も遠ざかった。

　昭和50年代は最後の最後に多賀竜が平幕優勝で何とか一矢。昭和60年代、平成の初めにかけては、君ヶ浜が再興した井筒部屋が隆盛。中でも霧島が大関となり優勝も飾ったが、その後はまた長い空白が訪れた。

　平成20年代に井筒から横綱鶴竜が誕生。大関は平成初期の霧島以来、横綱となると柏戸以来半世紀ぶりの誕生だった。断続的ながら伝統を引き継ぐ井筒部屋にとっては、３代西ノ海以来の横綱だ。

　令和には時津風の正代が優勝して大関に昇進。同部屋の優勝は北葉山以来、大関昇進は豊山以来、いずれも57年ぶりの名門復活劇だった。

　比較的安定した体制を維持していたが、平成20年代終盤に追手風一派が合流したが、錣山、湊が離脱。令和に入って中川、井筒、鏡山が閉鎖。井筒は師匠急逝によるもので、実弟の錣山は既に一門外で継承は認められず。同部屋出身の霧島が率いる陸奥部屋へ合流し、現役横綱が移籍する異例の事態となった。陸奥部屋も井筒部屋から改称した部屋なので、再び統合したという見方もできる。

　3年春場所中に横綱鶴竜が引退。大関正代も停滞しているが、成長株が多く期待が持てる。3年初場所で大栄翔が追手風部屋初の優勝、三役常連となっているほか、霧馬山、若隆景も上位定着。若隆景の次兄・若元春も新入幕を果たした。ベテランの域に達している遠藤も、照ノ富士から殊勲の星をあげて優勝を争う活躍を見せた。

　伊勢ノ海の勢は引退してしまったが、錦木が復調して関取不在は阻止。しかし、もう30歳を迎えており次世代の台頭が待たれる。